< 平成9年 夏 > 平成21年11月28日掲載
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父の忌を十とせ咲きつぐ鉄線花 (5月7日)
父の忌の客をもてなす豆御飯 〃
新茶買ひ可も不可もなき身過ぎかな
幟立つ土佐の狭間の一軒家 (高知県)
灯を消してなほ短夜を話し込む
衣更へて身のたよりなき雨ひと日
卯の花腐し鴨居に喪服掛けて干す (加藤正一氏十年祭)
山寺の盛衰ひそと著莪の花 (蓮随山 旧梅香寺跡)
山門のほかなにもなき葎かな 〃
短夜の海より明くる露天風呂 (南紀勝浦 浦島温泉)
午後の暇偸みたたずむ花菖蒲 (伊勢神宮外宮 勾玉池)
清々と勾玉池の花菖蒲 〃
初菖蒲風捉ふるも幼かり 〃
末社訪ふ人の稀なる苔の花 (伊勢神宮外宮)
万緑や伊勢に日の神風の神 〃
<三重県桑名市 吟行会下見>
伊勢平野大きく梅雨に入りにけり
暮れがての大河の静寂梅雨深し (揖斐・長良川)
梅雨暗き鳥屋の孔雀や威を張るも (九華公園 桑名城址)
亀の子の塵芥と見られて泳ぎだす 〃
今昔の七里の渡し蟹がをり
さくらんぼ二人でつまみ恋ならず
酒過ぎて時失へる水中花
百合活けて母の起き臥し音少な
自治会に出て扇風機の風の端
鳰の巣も秘密の一つ少年期
暑き日や血族のまた癌に逝き (従姉逝去)
羅の袖を押へて骨拾ふ 〃
明易に点る提灯喪の家 (井上義治氏逝去)
伊良湖岬佇てば夕焼の真只中 (愛知県渥美半島)
志摩行くやみぎ蝉時雨ひだり海 (鳥羽市 パールロード)
師に蹤きて海を眺むる雲の峰 ( 〃 鳥羽展望台)
落日の海に尾をひく露台かな
逝く夏の砂踏み鳴らし淋しみぬ
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