< 平成1年 >
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初商店主いささか酒気帯びて
雛壇に部屋を譲りし吾子と寝る
土筆煮て優しくなりぬ妻の貌
花のころ麺ゆがく手に慣れの見え (弟 ラーメン店開店)
自転車を磨く春日に映えるまで
五月雨に神楽高音の葬りかな (伊勢市 祖霊社)
五月雨に濡れゐし墓を清めけり (父 命日)
鉄線花ひとひら欠けて暮れはじむ 〃
伊勢湾を藤棚ごしに望みけり (伊勢市二見町 太江寺 )
おぼろ夜の通夜の柏手音立てず (足代画伯逝く)
万緑のひとさわぎして通り雨 (三重県熊野行)
万緑の溶けだしそうな紀伊の雨 〃
爪を切るはや梅雨めける音のして
短夜をもてあましゐるひとりかな
雨降つて地の匂ひ立つ凌霄花
アマリリス空青ければ蕾張る
<三重県伊勢志摩吟行会 十一句>
夏蝶や色とりどりの漁具置場 (鳥羽市 石鏡 六句)
海女の声みな大きくて夏来る
老鶯や崖に張りつく海女の墓
酒壷に百合の献花や蜑の墓
良き潮に声はずませて鮑採り
鮑採るひとつは夫の肴かな
航跡の南に消ゆる夏霞 (パールロード展望台)
月涼し波際で聞く波の音 (志摩市浜島 ホテル宝来荘)
神垣に白極まりし泰山木 (伊勢神宮内宮)
緑蔭を出てくれなゐの巫女袴 〃
緑蔭につまづきやすき煉瓦道 〃
隣家より新妻の出て溝浚へ
淡路島よく見え風鈴よく鳴りぬ (兵庫県神戸市垂水上高丸)
明易や書類散らかる枕元
不器用に大きく叔母の祭寿司 (三重県度会郡一之瀬)
住職のすててこでゐる村祭 〃
祭果て山の端に月かかりけり 〃
ロングヘア巻いて夏帽子の中へ (三重県志摩)
裸子の奥に見えゐて何でも屋 〃
大阪に溢れるネオンビール飲む (大阪市 梅田)
落日やこがねの海に立ち泳ぎ (香川県小豆島)
吹く事のなき笛磨く夜の秋
夜業人津軽の唄を聴いてをり
自販機で酒買ふ夜のちちろ虫
秋声やもの思ふ日の遠夜汽車
こほろぎやさざめき通る塾帰り
冷まじや引く波我をひく如く (伊勢市二見ヶ浦)
曼珠沙華咲き一天の紺深む (伊勢市 宮川堤)
末枯や井戸を覗けば我がをり (兵庫県 姫路城)
山消えて町が生まれて盆踊り (兵庫県神戸市須磨)
剃跡の顎撫でて秋惜しみけり
丹波栗剥いて山河を思ひをり (神戸時代を懐旧)
露けさに戸締り早き郷土かな
返り花しまひ込みたる笛出して
堀の水涸れて擬宝珠の影法師
大空へ網投げしごと枯桜 (伊勢市 宮川堤)
落葉踏む音に哀楽ありにけり (伊勢神宮外宮 勾玉池)
極まればもの皆さびし冬紅葉 〃
神の守る勾玉池や浮寝鳥 〃
山坂のなくて伊勢路の小春かな (伊勢市宮川町)
小春日や「左二見江二里二丁」 〃
風呂の湯を豊かに使ひ年を越す









