< 平成 2年 夏 >
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鈴蘭の花に音階あるごとし
石楠花や巫女の幼き笑ひ声 (伊勢神宮)
麦秋や石垣多き平家村 (伊勢市横輪町)
ゆかり説く婆の貌佳き菖蒲寺 〃
身内みな東京に住み麦熟るる
梅雨晴間ひと待つことの楽しけれ (愛知県岡崎駅)
炎天に守りを捨てし天守閣 ( 〃 岡崎城)
蓮の風葉をうらがへしうらがへし 〃
再会を約し振り合ふ夏帽子 ( 〃 岡崎駅)
蝸牛と付き合ふ暇ぞ欲しかりき
美しく老いたる母の夏帽子
伊勢湾の入口塞ぐ雲の峰 (伊勢市二見ヶ浦)
雲の峰瀑布の如き崩れあり 〃
晩涼や裏戸より友訪ね来て
白日の空のうつろや蝉の声 (三重県明和 国立療養所明星病院)
鷺草のひしめきあつて翔けにけり
< 蛍 20句 > (「朝」十周年記念特別作品)
賑々と蛍の闇に集ひけり (愛知県額田町乙川 10句)
堰の音轟く峡の蛍かな
唐突に急ぐ蛍のありにけり
どう見ても蛍火やはり悲しけれ
少年となりて蛍の闇にをり
ほうたるとつぶやけば亡き友のこと
橋脚をはぐれ蛍の過ぎゆきぬ
蛍火の消ゆる刻きて消えにけり
山峡の闇の底なる蛍宿
瀬の音に目覚めの早き蛍宿
蛍舞ふわが古里のそこかしこ (伊勢市佐八 10句)
子等連れて名もなき里の蛍狩
伊勢なれば平家蛍の舞ひにけり
山の背の闇なだらかな蛍狩
満天の星座の下の蛍狩
明滅の時に乱るる蛍かな
ほうたるの指にとまれば指照らす
蛍火をつまみ命をもて遊ぶ
妻呼んで蛍の闇を深めけり
諍ひし妻の見つめる蛍籠
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