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< 平成8年 秋・冬 >         

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  香煙に朝日鋭し原爆忌
  鐘の音のほかは黙せよ原爆忌
  町騒の中の黙祷広島忌

  いつまでも仕掛花火の薄煙     (伊勢神宮奉納宮川花火大会)
  花火より帰りて見遣る遠花火              〃
  花火終へ今日三日月と気付きたる           〃
  線香花火好きと言ふ君が好き              


  眠る子に明日の朝顔いくつ咲く
  コスモスに風呼ぶ妹の笑ひ声    (伊勢市郊外)
  小鳥来る渚一人は淋しけれ      (伊勢市二見浦)  
  妹恋ふや月かげ海に道つくり         〃
  奥伊勢の闇より闇へ天の川      (三重県度会郡中村)
 

  秋灯を過ぎわが影に追越さる
  街灯を辿りて故の無き愁思
  灯を消せば窓うきあがる無月かな
  秋の燈の母に一つ我にひとつ
  しまひ湯は気儘に使ふちちろ虫


  朝市ですぐ食む林檎一つ買ふ    (岐阜県高山市)
  もう一人の我がゐて抱く曼珠沙華  (伊勢市郊外)
  早々と祭果てたる秋時雨           〃
  減反の田に気晴らしの秋桜          〃
  秋夕焼待つ人あれば足早し


  菊の香の神垣にをるしづ心      (伊勢神宮外宮)
  こきみよく玉砂利をふむ菊日和        〃
  神杉の杜しんしんと秋の声           〃
  神杉に突上げられて天高し           〃
  行秋の堂を覗けば闇ばかり      (滋賀県大津市 比叡山延暦寺)


                <愛知県豊橋公園・伊良子岬 吟行会>

                  薄き日を溜めてやすけき冬の園
                  日の射して落ちくる木の葉よく廻る
                  赤すぎて拾ひし紅葉捨ててしまふ
                  冬紅葉散るも残るも悲しき色

                  衆にゐてひとり心地の冬の浜
                  冬海の人を拒める波頭
                  間向へば歓喜のごとし冬怒涛
                  冬ざれの海の華やぎ波の花
                  釣人のざぶざぶと入る冬の波
                  灯を消せば海の闇来る冬衾

                  旅終へてあと平凡に冬籠る


   立冬の夜のやはらかき雨の音
   落葉掃く次の落葉のために掃く   (伊勢神宮外宮)
   右は伊勢左は奈良へ初時雨    (三重県伊賀上野 鍵屋の辻)
   寄鍋や七人家族いま二人
   掛大根河を挟みて対峙せる     (伊勢市内 宮川堤)
   年の夜を電池切れゐし掛時計
   荒星に火の粉を飛ばす除夜篝    (伊勢神宮外宮)


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