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< 平成9年 秋・冬 >       

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  初秋の風街尽きしところより       (伊勢市 宮川)     
  初秋や百鳥繁き明の空           
  吾の背に子子の背に帽子つくつくし    
  向ひ家の取り壊されて萩残る        
  踏切の音の狂ほし盆の月        (伊勢市 宮町踏切り)
  一生の一刻使ひ葡萄食む


  稲刈つて十戸の村の墓あらは      (近鉄車窓 伊勢平野)
  穭田のはかなし筋目正しても          〃
  赤まんま幼馴染の家の跡  
  秋爽の一日は無為を極め込みぬ  
  赤い羽根角をまがりてすぐ外す      (伊勢市駅前)
  捨てかねて人形に挿す赤い羽根


  秋燈や猫の居据る家長の座
  一匹の秋の蚊またも見失ふ
  長き夜や本伏せ置きて一仕事
  燈を消して虫鳴かぬ夜と気付きたる
  虫絶えて何をよるべに眠らむか
  冷まじや夜半の枕辺音のなき


  漢ひとり夜食に点す厨の灯
  運動会見てゐて昔見てゐたる    (伊勢市立早修小学校)
  終に棲む常磐二丁目金木犀
  紅葉してテレビに映る故郷美し
  陽の甘し干柿によく染みこんで
  酔漢の黄落を踏み泣いてをり


            < 三重県 桑名市・三川公園吟行会 >

              鳥居建ち伊勢路ここより川千鳥
              山茶花や壕のみ残る城の跡
              枯芦や三川寄りて音のなき
              芦原の狭間は鴨の通り道

              夕焼の色極まりて冬ざるる
              夕焚火火を見ると人寡黙なる
              落葉焚けぶりて暮をうながしぬ
              セーターの真白きを着て師を迎ふ
              燗酒や師の前に首竦めつつ


    < 東海支部 闇汁句会 >
         (愛知県岡崎市 都筑邸)

    雨戸閉づ闇汁の闇つくるため
    闇汁に男のひとり小さくをり
    闇汁や酒酌む手許おぼつかな
    闇汁の誰の箸かや触れあひぬ

    闇汁の具の小さきを探り取る
    闇汁の何とは知らず美味かりし
    闇汁の果てて眩しき灯を点す
    闇汁の果てたるあとの鍋の様


              小春日や通勤電車海に沿ひ    (神戸在住時代回想)
              屑籠に反故と吸殻枯れし菊
              冬服の内ポケットより去年の物
              冬薔薇妻とは呼べぬひとと棲む
              伊賀越えの車窓真暗に時雨けり  (近鉄大阪線車窓)
              故郷はタイムカプセル除夜篝     (伊勢神宮 外宮)


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