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2006年1月26日 (木)

★②第39回 蛇笏賞 鷲谷七菜子氏 「晨鐘」抄 50句 <2005/05/29>

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「晨鐘」抄 50句(「俳誌「俳句」より)

  眉あげて立夏の雲と会ひにけり
  初雁の声か蔵書の中にゐて
  小鳥来る来信太き二三行
  南無南無のもつれてきたる十夜婆
  初伊勢の杉を高しと仰ぎたる
  名の山の襞深く年立ちにけり
  白雲の来りてゐたり薺粥
  昼月の忘られてゐる枯野かな
  鶴引きしあと深海のしづけさに
  山水に日の躍りゐる仏生会

  雨のすぢやや見えてゐる巣立かな
  草深くなりたる家の幟かな
  畳の目まつすぐ夏の来りけり
  道二つ出会ひてゐたる青野かな
  木の国にかくれて恋の螢かな
  老い母の消え入りさうな青葉かな
  青蜥蜴走りし光残りけり
  新涼の見る間にふゆる雨のすぢ
  秋蝉の切羽つまりし声つづく
  雁来ると心に風の立ちし日や
  
  落葉つくしてまざまざと連理の木
  返り花旧居必ず机置き
  枯菊の噴き出してゐる香かな
  日当れば弾み落ちして木の実たち
  古都歩きゐて冬の日の真あたらし
  あめつちの気の満ちてきし牡丹かな
  ひとすぢの涼気の文の来りけり
  沛然と雨若竹の明るさや
  乱おこるらしき雲ゆく枯野かな
  山水のとどろきを身に巣立鳥

  残されし鴨の羽うちの幾度ぞ
  耕人のまだ白雲の下にゐる
  ときに羽うごき抱卵うららかに
  霧の杉神事の笛のつらぬける
  橙を飾り山河をこころにす
  川音のとどろいてゐる恵方かな
  ひとところ草かたまりて雛祭
  木々の芽やかつて耽りし立志伝
  白雲のかなた白雲仏生会
  眉ひろく大暑の山と向ひけり
  
  影の山いつか日の山里神楽
  首めぐらせし水鳥に水ばかり
  春雨といふ音のしてきたるかな
  若竹の息見ゆるかの育ちかな
  夕立のはじめの音と聞きとめし
  籠枕こころに高嶺ありし日や
  落葉木の立ちつくしたる深空かな
  くらがりに柊の香や詩人伝
  木の葉とぶ日やてのひらの薬粒
  行く年の見まわしてみな水の景

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