★ 誓子忌
すっかり春らしく麗らかな晴天となりました。
今日 3月26日は誓子忌。
俳人 山口誓子の忌日です。 平成6(1994)年 92歳にて逝去。
山口誓子は京都市生まれ。 14歳にして俳句を詠み始めたそうですが、三高文化乙類に入学後 「京大三高俳句会」で日野草城の指導の下に本格的な作句活動に入り「ホトトギス」に投句。
大正11年 東大法学部に入り、水原秋桜子・富安風生・山口青邨らと「東大俳句会」を結成。 また4Sと称えられた内の一人として活躍しました。
近代俳句の新時代を切り開いたのは水原秋桜子と山口誓子であったと言っても過言ではありません。
山本健吉も名著「現代俳句」でこの事に触れていますので、少しだけ引用してみます。
『秋桜子の「葛飾」時代の句、誓子の「凍港」前半(昭和3年ごろまで)の句は、近代俳句の黎明となった。 比較すれば、秋桜子のほうがより短歌的・抒情的・詠嘆的であり、誓子のほうがより構成的・知的・即物的であるが、その調べや叙法にはさまざまな共通点があり、ともに在来のさびとかしおりとかいった古い俳句臭と袂別して、大胆に新しい近代的スタイルを樹立したものである。
二人のうちどちらが先に試みたかわからないが、おそらく机を並べて相互に切磋琢磨した結果と思われ、二人とも手近な手本として、歌壇における「アララギ」派の万葉調運動の成功を意識し、そのような改革の俳壇における実現を目ざしていたに違いない。 そしてそのような改革的意気が、4Sのなかでも二人の存在を華やかなものに印象づけた。そして誓子は秋桜子以上に大胆に特異な題材を手がけ、虚子をして「辺塞に武を行る征虜大将軍」と言わしめたのである』
この山本健吉の評は次の句に添えられたものです。 「流氷」は今でこそ春の季語として一般的に詠まれますが、誓子のこの句によって定着したのでしょう。
流氷や宗谷の門波荒れやまず
山口誓子は肋膜炎の療養の為に昭和16年から28年迄の12年間三重県の四日市市や鈴鹿市に居住していました。その折の事だろうと思いますが県内の鈴鹿工業高等専門学校の校歌の作詞をしています。
つきぬけて天上の紺曼珠沙華
海に出て木枯帰るところなし
炎天の遠き帆やわが心の帆
万緑やわが掌に釘の痕もなし
等の俳句に親しむ人なら誰でも知っている名句の多くがこの地で詠まれています。
その内 5年間住んでいた鈴鹿市白子の「鼓ヶ浦海岸」は誓子が主宰した「天狼」の俳人にとって聖地のような所となっています。
余談ですが、ここ白子はロシア漂流で名を知られる「大黒屋光太夫」の地元でもあります。 白子を出港して遭難漂流した事から苦難のロシア経験をすることになったのです。
誓子も大黒屋光太夫を身近に感じたのでしょう。 次のような句を詠んでいて句碑が建っています。
舟漕いで海の寒さの中を行く
また誓子は伊勢参宮を毎年欠かしたことがなく、志摩賢島で年を越した上 伊勢神宮に初詣をするのを常としていましたので伊勢とも縁が深く、伊勢神宮内宮前のおかげ横丁には「誓子記念館」があり、そして赤福本店やその他伊勢市内や周辺に多くの句碑が建っているなど、三重県伊勢市在住の私にとってはとても身近な存在の俳人です。
伊勢地方に建つ誓子句碑を下記に列挙してみます。
巣燕も覚めゐて四時に竈焚く 伊勢市 赤福本店
日本がここに集る初詣 〃 春秋園
孫右衛門西向き花のここ浄土 〃 宮川堤 松井孫右衛門人柱
知盛の谷水田とし植田とす 〃 矢持町 久昌寺 (平家村)
春潮に飛島はみな子持島 二見町 池の浦荘
炎天の遠き帆やわが心の帆 〃 山口歯科 潮松庵
真珠筏入江の奥に年迎ふ 〃 伊勢パールセンター
初富士の鳥居ともなる夫婦岩 〃 興玉神社
礼拝す佛のために咲く桜 度会郡玉城町 広泰寺
初日出て三つ島が置く三つの影 鳥羽市 鳥羽グランドホテル
百年を守護の青峯山青し 〃 鳥羽商船高等専門学校
初凪に島々伊良湖岬も島 〃 戸田屋別館
差し出でゝ崎々迎ふ初日の出 〃 鳥羽展望台
真珠島白葉牡丹も真珠なり 〃 御木本真珠島
葉月潮伊雑の宮をさしてゆく 志摩市 的矢湾大橋
遠近に靈山ありて初ゴルフ 〃 賢島カントリークラブ
高き屋に志摩の横崎雲の峯 〃 志摩観光ホテル
五月波寄せ来て砂の浜揺れる 〃 旅館ひろはま荘
一地方にこれほど多くの句碑が建つ俳人は他に類を見ないでしょう。 調べていて私も驚きました。
伊勢の海に見ゆる帆のなき誓子の忌
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≪‘のぶ`のフォト俳句≫~from伊勢【日々身辺抄】にて
山口誓子が療養の為に居住した鈴鹿市白子の鼓ヶ浦と、四日市市天ヶ須賀旧居角に建つ句碑の画像を掲載致しました。
宜しければ下記タイトルをクリックの上 ご覧下さい。
↓
山口誓子忌。 鼓ヶ浦(三重県鈴鹿市白子)。 旧居句碑(四日市市天ヶ須賀)
(2010/3/26追記)
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