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2008年11月 6日 (木)

★ 石川桂郎忌

 昨日の穏やかに晴れ渡った好天から一転して 今日は今にも降り出しそうな曇天。 
 室温計も正午現在で18℃と少し低めです。

 本日11月6日は俳人 石川桂郎の忌日です。

      水底も紅葉を急ぐ桂郎忌  神蔵器
 
 1975(昭和50)年没。 享年66歳。
 ・ 俳誌 「風土」 主宰。
 ・ 第1回俳人協会賞(昭和36年)を句集 『含羞』 にて受賞。
 ・ 第9回蛇笏賞(昭和50年)を受賞。

 また随筆家・小説家としても活躍しました。
 ・ 第25回読売文学賞随筆・紀行賞(昭和48年)を 『俳人風狂列伝』 にて受賞。
 ・ 第32回(昭和29年/1954年下半期)の直木賞候補。 『妻の温泉』 にて。

 石川桂郎は明治42年 東京三田の生まれ。 本名 一雄。
 高等小学校卒業後 家業の理髪店を継ぎ 昭和11年に店主となりますが、その翌年の昭和12年に石田波郷主宰の「鶴」が創刊されて参加します。
 また随筆が永井龍男に認められ 後に横光利一に文学を学びました。

 俳句や小説に夢中になった彼は昭和16年理髪店を廃業してしまいます。 
 そして翌年、小説 『剃刀日記』にて理髪師を描き、ラジオでも放送されるなど評判となりました。
 戦後、俳句総合誌「俳句研究」 「俳句」 の編集長を歴任した後、昭和39年に俳誌「風土」を主宰。
 昭和50年に66歳で食道癌のため死去。
 闘病中の下記の句は特に有名です。

      粕汁にあたたまりゆく命あり  桂郎

   ____________________________________________________________________________________________

      麗らかや今日はどの道とほらうか  暢一

 石川桂郎の句には思い出があります。 掲句は私の初心の頃のものです。 
 師 岡本眸先生のご添削は
  『石川桂郎先生に前例がありますので このスタイルは損です』 との事。 
 もちろん没に致しましたが、初心者の悲しさ、石川桂郎の事は存在すら知りませんでした。

 そこで前例と仰る句を歳時記や俳句関係の書物で捜しました。 師や先輩達に尋ねれば教えてくれたでしょうけれど、意地っ張りなところもある私ですので…。
 どんな句か また季語どころか季節すら分かりませんから苦労しました。 インターネット等はまだ存在しない時代です。
 やっと見付けたのが下記の句。

      昼蛙どの畦のどこ曲らうか  桂郎

 今になって思えばかなり有名な句です。 知らなかったとは云え止むを得ませんね。
 以来 石川桂郎は私にとって身近な存在となりました。
     
   ____________________________________________________________________________________________

  <石川桂郎 俳句抄>
       
     三寒の四温を待てる机かな
     理髪師に夜寒の椅子が空いてゐる
     仲見世の裏行く癖も十二月
     塗碗に割つて重しよ寒卵
     朝顔や境内浅く鬼子母神
     つまらなく夫婦の膝の柿二つ
     柿青し鏡いらずの鬚を剃る
     釣堀がこんなところに雨の旗
     疲れ鵜の瑠璃の泪目なせりけり
     ラムネ抜く音の思ひ出三田訪はな
     町中に寺の灯ともる針供養

     入学の吾子人前に押し出だす
     十円の銭の音なる社会鍋
     父の忌の朝より母の懐炉灰
     冬菜売老の眼鏡の紐むすび
     屑屋来て昼起さるる一葉忌
     剃刀の思ひ出話添水鳴る
     新宿に会ふは別るる西鶴忌
     水薄くすべりて堰や赤とんぼ
     原爆の日の病む手足洗ひをり
     おしめりや朝顔市に人減らず

     一つづつ分けて粽のわれに無し
     黒々とひとは雨具を桜桃忌
     膝でたたむ干物蕗の煮えこぼれ
     友来れば病をかくす古茶の缶
     憲法記念日裏町長屋見透しに
     裏がへる亀思ふべし鳴けるなり
     指切つて血がとまらぬよ四月馬鹿
     雪女彳たせし井水汲みにけり
     鳥総松女子理髪師に顔ゆだね
     買初にかふや七色唐辛子

     独酌のごまめばかりを拾ひをり
     ひこばえや山羊追ふごとく子を追ひて
     曇天の花重たしや義士祭
     旗鳴つて雛市立てり畦のくま
     左義長や婆が跨ぎて火の終
     風の子が駈けすぎしより鍬始
     酒断つて万歳寒きラジオ切る
     河豚鍋や水面のネオン雨に痩せ
     柚子湯して妻とあそべるおもひかな
     柿の枝の影につまづく雪月夜

     夏祭水田水田を笛ころび
     婆ひとり稲穂に沈む鎌の音
     金魚売けふゐて明日をゐあはすや
     激雷に剃りて女の頸つめたし
     父の忌や二枚あはせの海苔あぶる
     遠蛙酒の器の水を呑む
     洗面の水の痛さの遠雪崩
     銭湯や煤湯といふを忘れをり
     西鶴忌人に疲れて帰り来る
     十六夜の妻は離れて眠りをり

     臥すわれに微熱の如く花合歓は
     棕梠味くや暗きところに暗き顔
     蟻地獄女の髪の掌に剰り
     太宰忌の蛍行きちがひゆきちがひ
     昼寝子や生れし日のごと髪濡れて
     激雷に剃りて女の頸つめたし
     青梅雨の深みにはまる思ひかな
     河童忌や水の乱せし己が影
     ゆめにみる女はひとり星祭
     高蘆のなかゆく道や桃青忌

     
     みこまれて癌と暮しぬ草萌ゆる
     点滴に縛られし月登りけり

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