★ 川崎展宏氏逝く (平成21年11月29日)
昨日の朝日新聞の記事で川崎展宏氏のご逝去を知りました。 享年82歳。 現代の俳句界をリードしてきた俳人をまた一人失い 残念でなりません。
川崎展宏氏は各俳句誌をはじめとして朝日俳壇の選者やNHK俳句王国の主宰などとメディアで活躍しておられた事もあって著名な俳人でしたが、私もNHK俳句王国に出演した折にご一緒した事があり、いま訃報に接して懐かしく思い出しました。
朝日新聞記事の画像をクリックして拡大頂ければ読めるとは思いますが、念の為に下記に記事を記します。
『「朝日俳壇」元選者 川崎展宏さん死去。
朝日俳壇選者を務めた俳人の川崎展宏(かわさき・てんこう、本名川崎展宏<かわさき・のぶひろ>)さんが、29日午前2時30分、肺がんのため東京都内の病院で死去した。 82歳だった。
葬儀は12月5日午前9時30分から東京都府中市多磨町2の1の1の多摩葬祭場思親殿で、喪主は妻美喜子さん。
広島県呉市出身。 東京大学在学中に加藤楸邨に師事、「寒雷」門下の若手として頭角を現す。 70年、森澄雄の「杉」創刊に参加、80年に同人誌「貂(てん)」を創刊し、代表や名誉代表を務めた。
94年から13年間、「朝日俳壇」選者を担当。 明治大教授なども歴任。 療養中今年9月にも、10句の最新詠を本誌に寄せた。
句風は軽妙にして繊細、花鳥諷詠と太平洋戦争の戦没者に対する鎮魂を主題とし、古典文学にも長じた。
代表句に、黄泉平坂(よもつひらさか=現世と黄泉の境)にいる沈没戦艦から電信が届いたという幻想の作
「大和」よりヨモツヒラサカスミレサク
言葉遊びが魅力的な
赤い根のところ南無妙菠薐(ほうれん)草
句集に「夏」(読売文学賞)、「秋」(詩歌文学館賞)、評論集「虚子から虚子へ」などがある。』
<川崎展宏 俳句抄>
「大和」よりヨモツヒラサカスミレサク
あ初蝶こゑてふてふを追ひにけり
いましがた出かけられしが梅雨の雷
うしろ手に一寸紫式部の実
かたくりは耳のうしろを見せる花
すみれの花咲く頃の叔母杖に凭る
ともしびの明石の宿で更衣
みづうみへこころ傾く葛の花
むつつりと上野の桜見てかへる
鮎の腸口をちひさく開けて食ふ
椅子一つ抛り込んだる春焚火
炎天へ打つて出るべく茶漬飯
夏座敷棺は怒濤を蓋ひたる
虚子に問ふ十一月二十五日のこと如何に
京都駅下車迷はずに鱧の皮
玉くしげ箱根の上げし夏の月
鶏頭に鶏頭ごつと触れゐたる
戸口まで紅葉してをる鼠捕
高波の夜目にも見ゆる心太
黒鯛を黙つてつくる秋の暮
骨もまた疲れて眠る龍の玉
座敷から月夜へ輪ゴム飛ばしけり
桜貝大和島根のあるかぎり
桜鯛子鯛も口を結びたる
酒盛りのひとり声高十三夜
人影のかたまつてくる寒牡丹
人間は管より成れる日短
赤い根のところ南無妙菠薐草
早乙女も影となる田の薄茜
天の川水車は水をあげてこぼす
塗椀が都へのぼる雪を出て
冬すみれ富士が見えたり隠れたり
冬と云ふ口笛を吹くやうにフユ
冬麗の水に靨や流れをり
桃の咲くそらみつ大和に入りにけり
二人してしづかに泉よごしけり
熱燗や討入り下りた者同士
白波にかぶさる波や夜の秋
仏生会鎌倉の空人歩く
方寸にあり紅梅の志
綿虫にあるかもしれぬ心かな
柚子風呂にひたす五体の蝶番
雄ごごろの萎えては雪に雪つぶて
夕焼て指切の指のみ残り
(現代俳句データーベースより)
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