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2006.01.26

厚き手  (鑑賞)  

          露寒の握りて厚き手なりしよ   岸風三樓


 俳句は己の心の記録である、と思っている。だから、もし句集を編んだ折には自分が呼吸をしている今の世相が通読して背景に匂うような句集でありたい。
 個々の句を抽出した場合は兎も角として、極端な表現をするならば明治時代なのか今の時代に詠んだ作品なのか分からぬような句集では困るのである。
 
 さて掲出の風三樓先生の句は昭和41年の作。
 昭和30年前後より社会性俳句の論争が活発となり、戦前「京大俳句」にも加わり


          軍需工業夜天をこがし川涸れたり  風三樓


等の作品を残している風三樓先生にとっても無縁であったとは思われぬが、しかし先生は社会性を匂いとして感じさせながらも独自の人間性豊かな作風にて「生活派」と称される。

 例えば

          戦後長し汗の鞄を今も抱き  風三樓


は昭和33年作。深く感銘し共鳴する所以である。風三樓先生は私の大学の大先輩でもある。
                                           (加藤暢一) 1999

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