春の山 (句評)
春の山海見えるまで登らうよ 加藤暢一
男性の作品が、女性より繊細で優しいというのはまま有る事だが、この作者もその一人である。 母上などとよく家族を詠まれている。
掲句も光眩ゆい「海」への憧れは、母上への思いが深くあるのだ。
冬林檎美味しと妹の癒ゆるなり 暢一
母麗しカーテン替へて薔薇活けて
伊勢平野押すな押すなと夏の雲
リズムカルで楽しい、自分に近い所で作っているのは好ましい。
吟行会で見せる写生句も仲々で、硬軟相まって器用なのかも知れない。
(小林希世子氏) 1996