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2006.01.26

風の盆  (鑑賞)  

          はるばると来てさみしさを踊るなり   岡本眸


 もう二十年にも昔の事になろうか。兵庫県神鍋山の民宿に逗留した折、宿の娘に村祭へ連れていってもらった事がある。
 戸数の少ない山村の事とて、暗くて狭い境内に数十人の村人が集まって笛を吹き太鼓を叩き小さな踊りの輪をつくっている。酒を振る舞われた迄は良かったが無理矢理踊りの輪の中に引っ張り込まれたのには閉口した思い出がある。
 
 師の掲句に出会った時、今まで思い出しもしなかったその事がまざまざと蘇ったものである。
 日本の唄や踊りはどうしてこうも哀調をおびているのだろう。神輿を担ぐ時の威勢のよい掛け声すらも聞きようによっては時にそう感じる。
 わび・さびを持ち出すまでもなく日本人はさみしさを楽しむ心情を一面として持っているのかもしれない。
 師もまたはるばると来てさみしさを楽しみながら踊っておられるようだ。     
                                          (加藤暢一) 1992

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