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2006.01.26

冬めく  (句評) 

          旅をして冬めくものに足の音   加藤暢一


 山中、あるいは木立の中をうつむき勝ちに歩いてゆく、一人の旅行者の姿が髣髴としてくる。
 「冬めく」は初冬の季。 木々に残った葉が時折、風で散ってくる。
 めっきりと日は詰まり、木の根元はすでに冥く、力無く残照は梢にとどまっている。
 流水はまだ涸れを見せず、秋から冬へ、冬へと激しく急いでいるように見える。
 水の音、風の音、時折の人声、その中でふと、作者は自らの足音に耳をとられた。
 一人歩む自分自身の足音、その微かな足音こそが、もっとも冬めくものである、と作者は感じとったのである。
 季節は自分のいのちの中にある。
 人生は旅、畢竟は一人旅…そんな思いが作者を捉えたのかも知れない。
 しみじみとした孤独感が胸をうつ。 それでいて、旅への憧れをかきたてもする。
 ふしぎな青春性を併せもつ注目作である。
                                         (岡本眸先生) 2002

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