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2006.01.26

蚊  (鑑賞)  

          すばらしい乳房だ蚊が居る   尾崎放哉


 自由律俳句は禁断の木の実である。
 定型の枠の中で格闘する事によって凡庸な自分でも能力以上の作品が生み出せると私は思っている。
 定型を無視したり破る事によって成立する自由律俳句があるが、これは天才にしか鑑賞に堪えうる秀句作品を生み出しえない世界であろうと思う。 だから尾崎放哉、種田山頭火等のごく限られた天才俳人を世に残したのみで自由律俳句は衰退していったのだ。
 それだけに逆に優れた自由律俳句に出逢うと実に新鮮で魅力的に思え、ついつい自分も定型を破ってみたくなる誘惑にかられる。
 まさに天才でも何でもない私にとっては禁断の木の実であり手を出してはいけないのだ。

 掲句は放哉が小豆島西光寺の寺男になってからの作品。山本健吉氏はタヒチ的風景と評したが、健康で豊かな乳房と一匹の蚊との取り合わせはまさしく昔の日本の漁村風景であったろう。
                                          (加藤暢一) 1992

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