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2006.07.30

伊賀  (句評)  

          麦を踏む人ゐて伊賀の山の里  加藤暢一


 なつかしいやさしさの漂う作品である。 明快であり音読して調べが良い。
 飛燕賞受賞後は、新しい領域への意欲に加えて花鳥諷詠を踏まえた作風の研究に打ち込んでいるようだ。
 伊賀上野の景である。 穏やかな日ののんびりした農村風景がバロック風に描かれている。
 しかしこの季節の伊賀の山里はまだ寒い。 枯れた林や、遠い雪嶺を背景に風の強い日もあり、そんな中での麦踏の厳しさが美しく穏やかな景の背景に詠みこまれ、作品の奥行を深めているのである。
                                        (高橋さえ子氏) 2003

除夜の湯  (句評)  

         除夜の湯へ行くたれかれに会ひたくて  加藤暢一


 三重は伊勢市在住の作者。 俳句研究の 「岡本眸特集」 に感銘。 眸先生に魅せられて俳句を始められたという、商店街で経営されている作者。
 さてこの一句。 仕事納めはどうしても夜遅くまで続ける作者は、この夜だけは町内の銭湯に出かけると云う。
 一年中の垢を落とし合いながら、同じ商店街の仲間との話し合いが愉しい。
 数十年を苦楽をともにした男同士の裸の付き合いである。
 この一句の裏側にある庶民的な作者の顔が好ましい。
                                       (長沼三津夫氏) 2004

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