藤袴 (自句寸感)
藤袴咲いて莟の紅惜しや 加藤暢一
植物の名に疎い私は聞くは一時の恥と割り切って遠慮なく尋ねる事にしている。
東海支部例会の会場で目にとまったのが、ごく小さなマッチ棒を十数本束ね、それを上から眺めたような赤い可憐な花である。
早速句友に名を教えて頂くとそれは藤袴。 但しこれは未だ莟、こちらが花と指されたのを見ると、白っぽい繊毛のようなのがもじゃもじゃとしたあまりぱっとしない花であった。
母老いて撫子似合ふ誕生日 暢一
弟から毎年母の誕生日に花を送ってくる。 今年は撫子。
嬉しそうに食卓に飾っている母を見ていての実感。 老いてこぢんまりとしてしまったが、母は結構美人である。
桐一葉素足の暮らしここらまで 暢一
淮南子は天下の秋を知ったが、素足で草履を履いていた私の場合は卑近である。 但し詩に昇華出来たと思っている。
ゆふぐれに少年泣けり曼珠沙華 暢一
所謂純文学を一番愛読していたのは中学高校時代であった。 泣いているのは多感な少年時代の私であり、そしてその時代の気分を未だに引き摺っている現在の私である。
(「朝」寒露集二【巻頭作品に寄せて】 加藤暢一) 2003